生産管理システムの導入を検討している中小製造業のみなさま、次のようなことでお悩みではありませんか。
・ソフトウェア投資の妥当性が判断できない
・数千万円の高額投資に二の足を踏んでいる
これらの課題を解決する支援制度が「省力化投資補助金」です。
省力化効果を示した事業計画により、国から最大8,000万円の補助金を受け取ることができます。
本記事では、中小製造業が省力化投資補助金を効果的に活用するための申請方法から採択率向上のポイントまで、わかりやすく解説します。
省力化投資補助金とは|製造業の人手不足解消を支援する制度
1-1: 対象事業者の確認
省力化投資補助金(一般型)とは、中小企業の労働生産性向上や賃上げを促進するため、人手不足解消に効果のあるオーダーメイド設備の導入費用の一部を補助する制度のことです。
まず始めに、みなさまの企業が対象になることを確認しましょう。
補助金の対象事業者は、生産・業務プロセスの省力化に取り組む中小企業です。
製造業の場合、資本金3億円以下または従業員300人以下の企業が中小企業に該当します。
1-2: 補助金額の確認
次に、受け取れる補助金額を確認します。補助金額の計算式は次のとおりです。
・従業員20人以下の製造業:投資額×2/3
・従業員21人以上の製造業かつ投資額3,000万円以下:投資額×1/2
・従業員21人以上の製造業かつ投資額3000万円超:投資額3,000万円×1/2+(投資額-3,000万円)×1/3
なお、補助金額には従業員数によって変わる補助上限が設定されており、補助金額の計算結果と補助上限額を比べて少ないほうが、実際に受け取れる補助金額となります。
【図表:補助上限額と補助率】
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 | 補助上限の投資額(目安) | |
|---|---|---|---|---|
| 補助金1,500万円まで | 超える部分 | |||
| 5人以下 | 750万円 | 2/3 | 1,125万円 | |
| 6~20人 | 1,500万円 | 2/3 | 2,250万円 | |
| 21~50人 | 3,000万円 | 1/2 | 1/3 | 7,500万円 |
| 51~100人 | 5,000万円 | 1/2 | 1/3 | 1億3,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1/2 | 1/3 | 2億2,500万円 |
そのほかにも、大幅賃上げ特例や最低賃金引き上げ特例などを適用することにより、補助上限額や補助率を引き上げることができます。
詳しくは、中小企業省力化投資補助金一般型のホームページをご確認ください。
1-3 生産管理システム導入で 製造業が受けられる支援内容
例えば、従業員50名の中小製造業が6,000万円の生産管理システムを導入するとします。
補助金を活用しない場合は全額自己負担となりますが、補助金を活用した場合は国から2,500万円を受け取れるため、自己負担額を3,500万円に抑えることができます。
(補助金2,500万円=購入金額3,000万円×補助率1/2+購入金額3,000万円×補助率1/3)
これにより、生産管理システムの導入に必要となる数千万円の高額投資を実行しやすくなります。
1-4: 【リスク】補助金の返還要件
省力化投資補助金の申請にあたっては、必ず頭に入れておくべき補助金返還要件が2つあります。
1つは、事業計画期間終了時点において、
給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させる目標が未達、
または
1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上の目標が未達
であることです。
もう1つは、事業計画期間中の毎年3月末時点において、
事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準が未達
であることです。
一度は受け取った補助金を返還することは、補助金を受け取れなかったときよりも悲しい気持ちになります。
補助金を活用する前に必ずリスクを理解し、補助金返還要件にあたらないよう十分注意してください。
省力化投資補助金をオススメする理由|生産管理システムとの親和性
2-1: 理由①:オーダーメイド設備が補助対象
成長加速化補助金やIT補助金など、システム投資に使える補助金はいくつかありますが、
中小製造業が生産管理システムを導入するにあたっては、省力化投資補助金が最も適しています。
その理由を順に説明します。
中小製造業は、企業ごとに生産形態および生産工程が異なるため、
パッケージ(既製品)の生産管理システムを導入しても上手く機能しません。
そのため、必要な機能を追加して自社仕様にカスタマイズする必要があります。
省力化投資補助金では、申請要件の1つに、人手不足の解消に向けて、
オーダーメイド設備などの導入を行う事業計画を策定することと明記されています。
このことから、カスタマイズを行う生産管理システムとマッチしています。
2-2: 理由②:補助上限額が高い
オーダーメイドの生産管理システムは、システムの規模やカスタマイズの内容にもよりますが、
数千万円の高額投資になることも珍しくありません。
省力化投資補助金は、従業員数に応じて補助上限額が最大8,000万円と
十分な補助金枠が設定されています。
同規模の補助金には、成長加速化補助金と新事業進出補助金がありますが、
どちらも補助事業の目的が企業規模の拡大であり趣旨が異なります。
また、省力化の趣旨が一定しているIT補助金は、補助上限が最大450万円と物足りなさを感じてしまいます。
2-3: 理由③:十分な事業期間が取れる
生産管理システムの導入は、要件定義、操作教育・システム利用、スプリント(システム通し運用確認作業)、
アドオン開発、受入検収・本番稼働であり、発注から納品までに1年以上かかることが想定されます。
省力化投資補助金は、事業実施期間が交付決定日から18ヶ月以内(採択発表日から20ヶ月以内)
と1年以上あり、生産管理システムの導入に必要な期間を確保できます。
2-4: 結論:生産管理システム導入の支援制度は省力化投資補助金
上記①~③の理由に加えて、省力化投資補助金の採択率が執筆時点で65.6% と、
とても高くなっていることもオススメ理由のひとつです。
今後は申請数の増加に伴って採択率が落ち着いてくるものと予測されますが、
他の支援制度と比べて補助金を受け取りやすい環境下にあります。
生産管理システムの導入を検討している中小製造業のみなさまにおかれましては、
合わせて省力化投資補助金の活用を強くオススメします。
省力化投資補助金を活用するための事前準備|省力化効果の試算
3-1: 現状の業務分析
ここからは、実際に省力化投資補助金を活用するための手順をご説明します。
申請要件の1つである、生産管理システムの導入による省力化効果(業務量が削減される割合)の試算から始めます。
まずは、現状の生産管理業務を定量的に把握します。作業工程のフロー図を作成し、
作業者数と作業時間を記録、これらを乗じて1日あたり総作業時間を算出します。
補助金申請における 業務分析が難しい場合は、導入を検討している生産管理システムのベンダーに
協力を依頼することで、試算していただける場合があります。
3-2: システム要件の整理
現状の業務分析の結果をもとに、システム化する業務範囲を決定し、複数のベンダーから見積りを取得します。
このとき、補助金の申請に理解があり、省力化効果の試算に協力的なベンダーを選ぶと、
申請および採択後の手続きがとても楽になります。
見積り取得時には、合わせてシステム導入後における作業工程ごとの予測作業時間
を提出するよう依頼します。
3-3: 省力化効果の試算
現状の総作業時間とシステム導入後の予測総作業時間から、
省力化指数(削減時間÷現状の総作業時間×100)を算出します。
これにより、省力化投資補助金の申請要件を満たします。
省力化投資補助金の申請にあたっては、この事前準備が最も大変です。
製造計画、在庫管理、進捗管理、品質管理、原価管理など、
生産管理システムの導入によって省力化する作業工程の範囲が広いほど、
現場の情報収集に労力と時間がかかります。加えて、ベンダーの協力も不可欠です。
通常、これらの事前準備に1ヶ月程度の期間を要する
ため、早めに着手することをおすすめします。
省力化投資補助金で採択されるためのポイント|評価点数を積み上げる
4-1: 審査項目を抜けもれなく記述する
事前準備が終わりましたら、事業計画書を作成します。
採択されるためのポイントは、評価点数を確実に積み上げることです。
省力化投資補助金の審査項目は、省力化指数や投資回収期間、付加価値額、
オーダーメイド設備の観点で評価する技術面、スケジュールの具体性、
企業の収益性、生産性、賃上げの観点で評価する計画面、地域経済への貢献、
日本経済発展のために支援すべき取組の観点で評価する政策面です。
どれほど優れた内容の事業計画書であったとしても、
審査項目の観点のうち1つでも記述が抜け漏れた場合、その評価点数はゼロになり、
不採択になる可能性が極めて高くなります。
4-2: 加点項目を疎かにしない
審査においては、加点項目も採択率に大きな影響を与えます。
ものづくり補助金総合サイトのデータポータルによると、加点項目が0個の企業と2個の企業では、
採択率が20%も変わるという結果が示されています。
執筆時点において、省力化投資補助金の加点項目のうち、
事業継続力強化計画の認定と成長加速マッチングサービスへの登録は、全企業が取り組めます。
特段の理由がない限り、認定・登録をしておくと良いでしょう。
4-3: わかりやすく書く
審査員は、経営の専門家ではありますが、業界の専門家ではありません。 加えて、大量の事業計画書を審査するため、1件あたりにかけられる時間は限られており、 分からなかった内容について調べることはほとんどありません。 業界や技術のことをはじめて知る審査員であっても、事業計画書の内容が理解できる ように、わかりやすく書くことを心がけるとよいでしょう。
4-4: 補助金申請支援の専門家を活用
事業計画書の作成が難しい場合は、補助金申請支援の専門家の活用をオススメします。 制度目的や審査項目に沿った事業計画の策定についてアドバイスを受けることができ、 採択率が高まります。 また、採択後から補助金が入金されるまでの手続きが不安の方も、 アフターフォローに対応している専門家を選ぶことで、 安心して補助事業を推進することができます。
省力化投資補助金の申請方法|4つのステップで解説
5-1:事前準備と要件確認
ここからは、生産管理システムの導入を決めた中小製造業が省力化投資補助金に申請し、
採択され、補助事業の開始に至るまでの流れを4つのステップに分けて解説します。
まずは、3.省力化投資補助金を活用するための事前準備に沿って、省力化指数を試算します。
補助金の公募期間は、開始日から締切日まで1.5ヶ月程度であり、
公募が始まってから申請準備を進めていては間に合わない可能性があるため、
あらかじめ準備をしておくことが望ましいです。
補助金の公募が始まりましたら、公募要領を読込み申請要件を満たしていることを再確認します。
公募回によっては申請要件が変わっていることがあり、
要件を満たしていなければ審査されることなく不採択になるからです。
5-2: 申請書類の準備・作成・申請
申請要件を満たしていることが確認できましたら、事業計画書を作成し、
申請書類一式を揃えて、申請作業を行います。
事業計画書の作成は、補助金申請が初めての人で2~3週間かかります。
日常業務と並行して申請準備を進めることから、
余裕をもったスケジュールを立てておくとよいでしょう。
また、システム投資にあたり金融機関から借り入れを行う場合は、
金融機関確認書の提出が必要になります。
金融機関に発行を依頼してから書類を受け取るまでに1週間程度かかりますので、
スケジュールに組み込んでおきましょう。申請作業自体は、1日もあれば十分終わります。
5-3: 審査・交付候補者決定
申請手続きが完了してから交付候補者決定まで、3ヶ月程度かかります。その間に、
申請内容や添付書類に不備などがある場合は、差し戻しが行われます。
原則としてメールで連絡があり、
対応期限が1週間以内(場合によっては1~3日以内)と短く、
対応しない場合は不採択となるため、メールを見落とさないように注意が必要です。
また、一定の補助額を超えた事業者は書面審査に加え、オンラインで口頭審査が実施されます。
採択結果は、ホームページにて公表されます。
5-4: 交付申請・決定
補助金交付候補者として採択された企業は、研修動画を視聴してください。 視聴しない場合は、採択が無効になります。その後、生産管理システムの相見積書を取得し、 交付申請書を作成、補助金事務局に申請手続きを行います。交付申請から1ヶ月程度で交付決定通知書が発行され、 補助事業に着手できるようになります。
まとめ
省力化投資補助金は、中小製造業のシステム投資を後押しする有用な制度です。 本記事の要点をまとめると次のとおりです。
- 省力化投資補助金は、生産管理システムの導入に最適な支援制度で、自己負担額を抑えることができます。
- 申請にあたっては、省力化効果を試算する事前準備が重要です。生産管理システムベンダーと協力して実施しましょう。
- 採択されるためのポイントは、事業計画書に審査項目の観点を抜け漏れなく記述することです。補助金の専門家を活用することで採択率が高まります。
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